鉱石ランプ
-20130811-



◆灯記13hd-01: Kirche
◆灯記13hd-02: ドロップ計測管







鉱石ランプ
-20130811-





◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
人の立ち入れぬ、湖に浮かぶ島の古城。
その街の名はキルシェ。
かつて栄えた都に住まいしていたのは、定められた寿命もなく、先の尖った耳を持つ、人間とは異なる種族。

小箱には、彼の人たちにまつわる品が、おさめられております。






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
美しかった都は、滅び、廃墟と化し、美しくも悲しい姿を晒しております。
羽根とともに眠る品も心なしか、さびしげに見えましょう。






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
キルシェの街は、不思議な力に守られており、主なきあとも外界との接触を断っております。
街に入るには身を証す品が必要と、ひそかに言い伝えられております。






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
キルシェの人々の思いを安らえるための場処。
その場を守るように、祭壇に捧げられておりし、虹色の光を放つ珠。






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
かつての姿を留めるは、一枚の写し絵。
ひそかに、とある人々の血筋に伝えられし写し絵。






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
語り部:瀬水
画家:月遠






◆ 灯記13hd-01: Kirche ◆
語り部の一族に伝えられし、彼の人たちの物語。
満天に星を散りばめた夜空の下を、月光を紡いだように輝く白金の髪を風に遊ばせて、足音も立てず歩く、尖った耳を持つ彼らの物語。
人ならぬ彼らの存在に魅せられた語り部の末裔が訪れた、美しき人たちの、物哀しい廃墟。





少しご紹介を。

 キルシェは、私たちの街と似ているところもあり、まるきり似つかぬところもあった。  石畳は継ぎ目があるが、驚くほど平らかに整えられて、指の入る隙間もない。歳月によって欠けた縁がある と、不揃いな痛ましさすら感じた。  街は段丘に添って渦巻状に道が作られ、道なりにのぼると、街の中心部にそびえ立つ尖塔にたどりつくよう だった。塔を目当てに、私は静寂の街を歩んだ。  光の覆いの中にあるせいだろうか、外よりも、太陽の光が弱いように感じる。明るさは充分なのだが、紗幕 を通したように淡く灰緑がかって感じられる。光でさえも街の静寂を壊さぬように気遣っているのだろうか。  家並みのそこかしこに樹木が枝葉を茂らせているが、我が世を謳歌してもよい緑も、気配がひそやかだ。  肌に冷涼な空気の流れに、私は知らず身を震わせた。  キルシェの街を歩いているのに、自分がここにいるのか、確信が持てない。  長い旅の間に、私は古老の話を聞き、俗謡を聞き取り、学者の高説を拝し、文字すら覚えて綴じ本を読んだ。  それら、他者の思いに深く入り込んだときのように、自分というものがなくなって、他者の内側を他者の皮 をまとってさまよっているような、ふやけた感覚に押し包まれている。  石畳を踏む足音はくぐもり、吸い込む空気に追い出されて自らの中が空っぽになり、水中を泳ぐかろやかさ とからみつく重さで手足を動かしている。  螺旋状にのぼり進んでゆきあったキルシェの数区画は、緑にのみ込まれていた。  木の根が石畳を持ちあげて割り、枝々が家の屋根を越えて張り出し、蔦が壁をおおう。  しかし朽ち果てた印象よりも、緑と同化して涼やかな木漏れ日ばかりの暗がりに浸ると、今の状態こそキル シェ自体の望みに近いのではないかとさえ思える。  差し交わされた枝葉の天蓋は繊細な編み物めいて、こまかな目から光をこぼし、影をやわらげる。  ひときわ濃い緑蔭に誘われて、私は道を外れた。  苔むした石段をのぼる。やわらかな苔の褥の感触で靴底が受け止められた。  一段のぼるごとに光はかすかに翳りを帯びて春の甘い黄昏を思わせた。鍵が道を通じさせるのだろうか。一 足ごとに、景色が二重写しになっていく。苔むす石段と、塵ひとつなく清められた石段が、ひとときに私の目 の表を過ぎてゆく。  十段もない石段をのぼりきると、私の身体は色を失い、あたりに溶けていた。目だけが代わりに色と光を得 て、透ける影をとらえた。  風になびく長い髪。草を踏んでも足跡の残らない、かるい歩み。重さのないものの仕草。  私の目の前を、少年とも少女ともつかない子供が駆けていった。  羽根でも生えているようなかるい身のこなしで、右手の石造りの建物に、子供は消えた。  私は後について建物に入る。  蔦の絡んだ柱、剥がれ落ちた天井の色つきタイル、かつてはあざやかだったろう色褪せた壁。  磨き抜かれた柱、色つきタイルで装飾の施された天井、目の覚める色使いながらも上品な壁。  今と、往古と、どちらもが私の目を過ぎてゆく。





鉱石ランプ
-20130811-





◆ 灯記13hd-02: ドロップ計測管 ◆
星降りの夜にのみ採集できる、特別のドロップ。
かつて鉱石ランプ商会にて取り扱ったドロップ計測管が、自らにまつわる物語を語りたいとでも言うのか、ふたたび入手叶いましてございます。
新たに皆様にご紹介するドロップ計測管。星降りごとに、ドロップの味も変わるようでございます。
どの味のときに舐めようか、計測管が頼りとなります。






◆ 灯記13hd-02: ドロップ計測管 ◆
降る星の美しさと、甘いドロップ。
祭りとドロップを楽しみに、大人も子供も、祭りの夜を待ちます。






◆ 灯記13hd-02: ドロップ計測管 ◆
星戴き:瀬水いう儀
星封じ:月遠りくぎ






◆ 灯記13hd-02: ドロップ計測管 ◆
ドロップは計測管に封じられてのち、七日間、日々味が変化してゆきます。






◆ 灯記13hd-02: ドロップ計測管 ◆
流星ドロップは希少な品であるため、街の人々にもひとり一粒しか渡りません。
いつ舐めよう、どの味にしよう。
悩ましい楽しみです。




少しご紹介を。

 祭りは、砂漠の壮麗な日没から始まる。  街の人々は、街路や家々の窓から、赤銅色に煮溶かされた日が砂漠の燃え立つ黄金の波の中へ没するのを見 送る。日の投げかける最後のひとすじの光も砂の向こうへ沈みきると、祭りの始まりの鐘が街中に鳴り渡る。  道を挟んで張り渡された撚り紐に、火を灯したランプがすべらされる。  色水は家によって製法が違い、手持ち用のランプが露店で売ってもいるから、淡い色から濃い色まで様々な 取り合わせがある。蜜色や紅色、空の色、雲の色、若葉の色など、小さなランプは撚り紐に吊るされて、ぶつ かりあって、小さく音を立てる。風が吹いて大きく鳴ると、子供たちは手を打ち合わせて囃し立てる。  ランプの色も音も、星を招くと言われているからだ。色数が多いほど、音が高鳴るほど、星が多く降ると言 われている。  子供たちは手に持ったランプで自分の影を壁に映したり、ランプを重ねて光の色をかけあわせる。乾いて白 茶けた街が、澄んだ光と影がさざめきあう水底のようになる。  いつのころから始まった祭りなのか、長老でさえ、正確には言えない。  星降りの祭りは、このオアシスの街でだけ行われる祭りだ。流星雨の夜にのみ、街端の泉から「流星ドロッ プ」と呼ばれるドロップが採れるのだ。始めはわずかなドロップをすくうだけだったようだが、いつしか、流 星雨の時期に合わせて、祭りが行われるようになった。