鉱石ランプ
-20121231-



◆灯記12sw-01: 夜―ライル―
◆is11: 翠迷夜の夢渡り
◆is12: 時計語り







鉱石ランプ
-20121231-





◆ 灯記12sw-01: 夜―ライル― ◆
語部:瀬水、薬師:月遠
ライルの物語、薬袋、薬たる鉱石のセット。

鉱石は、砂漠のバラ、アメシスト、ラブラドライト……ではあるが、
ライルの薬は採集量が極めて少ないため、商会ふたりの分は不足している。
そのため、これは瀬水所有の鉱石であるが、蝶―ファラーシャ―の薬が、ラブラドライトであるか、ピーコックオアであるか失念したとのこと。
一部の方のお手許には、ピーコックオアが渡っているやも知れませぬ。






◆ 灯記12sw-01: 夜―ライル― ◆
「蜃気楼の夜」という、子供にしか見えない世界から、不思議な効果のある薬を取り出す子供たちと、その薬の話をご紹介いたしましょう。






◆ 灯記12sw-01: 夜―ライル― ◆
不思議な効力のある薬。
この本にてご紹介するのは、
 ファラーシャ―蝶―
 リーファ―繊維―
 タルジュ―雪―
の三種類。






◆ 灯記12sw-01: 夜―ライル― ◆
しかしながら、鉱石ランプ商會扱いのものは、薬効はありませぬゆえ、見た目を通じて、ライルの子供たちの生み出ししものを想像くだされませ。




少しご紹介を。

 夜になると、砂漠は急激に冷え込む。砂はおそろしく冷たく、夜空へ投げれば星になってきらめきそうだ。 息が止まりそうに真っ暗い夜空に輝く無数の星々、かぼそい月。天からの光の冷たさと裏腹に、砂地を照らす ランプの光は暖かい。  夜の市場。  数十張りもの幕屋が、風の弱い砂の谷に集っている。  珍しい酒や装飾品、異国の文物を求めて、人々が市場へ足を運ぶ。寒気を遮る厚い絨毯を垂らされた幕屋の 入り口には、それぞれの商いものを表す紋様が描かれている。謎かけめいた意匠は、異邦人には読み解けぬも の。  目隠しをされた太陽の図案を掲げた幕屋がある。夜にしか売られぬ薬、特別な効能を持つ薬の店の紋様だ。 薬の作り手を称して「蜃気楼の夜―サラーブ・ライル―」  苛烈な太陽の隠れた夜に、人はライルの薬を求め、するりと幕屋に忍びいる。  迎えいれるは、年若い青年と、男女の区別もわからぬ年端の子ら。蔓草の模様が緻密に織り込まれた絨毯に、 客と青年らとは相対して座る。青年は呪術でも施すげな手つきで、頑丈に鋲打たれた革装の箱を開いてみせる。 中に並べられたるは、とりどりの色の塊。傍らのランプが炎慄かせ照らす、きらめく青、透ける紫、霞の白。 「これらは、我らが村でのみ精製されるライルの薬。お求めの薬効は、如何に?」  隣にいた子らが、小鳥のような声で薬の効き目を詞に紡ぐ。 「蒼き欠片は夜空の欠片、季節めぐりて星の輝き地に落ちたるを、」  子らの詞も、子ら自身も、薬効高める呪具めいている。旋律に惑わされる心地して、客は思わず目をしばた く。笑みを浮かべる青年も、薬効を歌う子らも、どちらも自分と同じ褐色の肌だ。妖魔の肌色はしていない。 髪も同じ、夜の黒。しかしながら、かすかな違和感にささやかれ、客は子供の瞳に見入る。  つよい太陽に照りつけられる砂漠の民は、日差しに耐え得る濃い色の肌や髪、瞳を有する。だが歌う子らの 目は、それ自体が輝かんばかりに、謎めく淡色の瞳をして、客とはまるで異なる世界を見ているようだ。  幕屋の印たる目隠しをされた太陽とは、昼の間は目を封ぜられる子らを示している。彼らの一族は幼いころ、 誰も光のつよさに抗し得ない。目を封ぜられ、夜に生きる。幼子らは、長ずるにつれて光に融ける、彼らの目 にしか見えぬ蜃気楼の夜を遊ぶ。  薬師であるライルの子らは、村の中でも格別に夜に愛される家系から生まれることが多い。昼にはあらぬも のを彼らの夜から掴み取り、もって薬の元と成す。ライルの薬は珍重され、目隠しされた太陽の天幕が市場に かかれば、客の入らぬ夜はない。





鉱石ランプ
瀬水いう儀個人作品
-20121231-





◆ is11: 翠迷夜の夢渡り ◆
半人前の夢渡りであるシーリィが、貘の手を借りつつ、客の依頼で夢を渡る。
貘は運悪くシーリィつかまり、黒猫の姿に閉じ込められているため、シーリィの持つ鍵を喰らって力をつけようと狙っている。








◆ is11: 翠迷夜の夢渡り ◆
言葉を喋るウサギから、「夢を大事な人にあげたい」と頼まれ。
同時に、「迷い夢を探してほしい」とご婦人に頼まれ。
半人前の夢渡りが、貘に助けられながら、依頼を解決しようとするが、はてさて、半人前の夢渡りは、自分ひとりの力で乗り越えられるのか。




少しご紹介を。

「ウサギさんは、何が目的でいらしたんですか?」  他に呼びかけようもありませんし、仮にウサギの格好であってもお客らしいので、丁寧に訊ねました。 「そうです、お願いがあって来たんでした。私ったら、たどりついた安心で、のんびりしてしまって」  喋るのはゆっくりですが、お喋りな質のようです。夢渡りは昼間の失態を思い出して、うまく対応出来るか 心配しましたが、ともあれウサギの来訪理由を確かめてからです。 「夢をつかまえて欲しいんです」  またも迷い夢の相談かとシーリィは身構えました。ウサギはテーブルの真ん中に跳び出てきて、シーリィと 視線を近づけて、もぐもぐと口を動かします。がんばって説明するウサギは真剣なのですが、ひげも一緒に揺 れているのが、なんともかわいらしいのでした。 「夢渡りさんは、夢をつかまえて、函に入れて、渡してくれると聞きました。つかまえて欲しい夢があるんで す」  夢渡りがもっとも多く頼まれる仕事でした。シーリィは安堵しましたが、一方で、このウサギの夢に渡るの は、人間の夢に渡るのとまったく同じだろうかと、心配にもなりました。自分はおろか、師匠が他の生き物相 手に渡りを試みたとも聞いていません。 「あ、心配しないでください。悲しい夢じゃないんです。楽しい夢なんですよ。瑞々しい草がたくさん生えて いる草原で、散歩している夢なんです」 「それは、ウサギさんの日常なのでは……」  つい、思ったそのままを口にしてしまい、夢渡りは慌てましたが、ウサギは短い前足をちょこまかと動かし ました。 「そうなんですよ、楽しい思い出なんですよ。私は、とっても楽しい思い出を持っているんです。だからね、 これをあげたいんです」 「あげる……?」  もしかして、ウサギどうしの贈りものなら、草原をひたすら跳ねる夢も素敵な贈りものなのかも知れません。 自分がウサギならとシーリィが考えるに、草原に直接案内してあげた方が喜ばれそうですが、それぞれ好みが あるのでしょうから、口出しは無用です。  シーリィは、渡りに必要な部分だけをお客から訊くようにしています。師匠から、深入りすると帰って来ら れなくなる危険性があると、耳の穴が詰まるほどくり返されたからです。 「でも、あげるなんて……」  事情には立ち入りたくありませんが、懸念を見過ごしには出来ません。  夢渡りの仕事は、お客の夢に渡って夢の核をつかまえることです。渡りを頼む理由は、お客によって様々で す。忘れてしまいたい夢も、ずっと残しておきたい夢もあります。夢渡りは夢を生む思いの結晶たる核をつか まえて、小函に封じて、お客に差し出すだけです。封印は無期限ではありません。忘却ではなく、一時的に閉 じ込めておくだけですし、夢は見た人のものです。昔話には人の夢を買った男の例もありますし、人の夢に入っ た冒険譚もあります。浅学なのか、シーリィは、夢を他人にあげた話を知りませんでした。  シーリィの危惧は、しかめた眉や曲げた唇に出てしまいました。ウサギは、後足で立ちあがりました。 「あげられないですか?」  不安そうに鼻を動かすウサギに、シーリィは首を振りました。 「したことがないし、師匠からも聞いたことがないです。誰かの夢を誰かにあげても、元の人の見たとおりに なるかわからないし……。ウサギさん、夢渡りは誰かから夢を奪うんじゃないんです。本人に渡して、本人の もとに還るものなんです。だから、完全に誰かにあげちゃった場合、あなたの夢がどうなるかわからないから ……」





鉱石ランプ
瀬水いう儀個人作品
-20121231-





◆ is12: 時計語り ◆
うつくしい時計に、胸踊らせずにいられないという瀬水が、時計にまつわる小さな物語、その仕組などを愛を込めて語る本。






◆ is12: 時計語り ◆
時計には何故、「○石時計」と呼ばれるものがあるのか。
時計の文字盤はどうして右回りに数字が振られているのか。
など、時計に隠されている小さな物語をご紹介しています。