-20100815- |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ 本とお土産のセット形式でした。 お土産は、作中の「月光号」という船でしか買えない品です。 写真の写りがいささか難ですが、実際はもっと甘めの金色の紙です。 「月光号」という、三日月ペンギンたちが乗組員の豪華客船で、 さえない詩人と、老紳士が旅をする話です。 オーロラの中を翔け、星の海を渡り、月の光を受けて航行します。 |
「雨が降るかも知れませんよ」
手すりから身体ごと振り向くと、もうひとりの顔なじみ、月光号の乗組員がいた。乗組員は三直制で、
彼は深夜から早朝を受け持つ二等航海士だ。彼の受け持ちである昼夜逆転の当番時間に起きている乗
客は殆どいない。しょっちゅう甲板に出ていた僕が、船酔いで眠れないのか心配されたのが仲良くなっ
たきっかけだ。
「空は晴れてるけど……」
二等航海士君は、片羽で空に線を描いた。今夜も誇らしげに、喉許の三日月印が光っている。
「ここらは、雨の通り道なんです。今夜は、降っても一瞬でしょうけれど、初めて見る方はたいてい喜
ばれますよ」
「もし降ったら、夜中に起きていたご褒美かな」
二等航海士君は、あるのかないのかわからないペンギンの撫で肩を竦めてみせた。
「僕は乗船したてのころ、額にぶつかってコブをこしらえました。角かど★は多分ありませんが、お気
をつけて」
どうしても両目をつむってしまう不器用なウインクをして、二等航海士君は甲板を船尾に向けて歩い
ていった。あの小さな額にぶつかるとは、よほど運が悪かったのだろうと、後ろ姿を見送った。
雨はいつから降るのだろう。
僕は手すりをつかんで、空を見あげた。
船の上も下も、さして変わらぬ景色が広がっている。満天の空にちりばめられた無数の星、下方に散
り敷かれた透明な星と光る星。
船は夜に分け入っていく。
首をそらせて仰あお★のいた頭の先の方を、何かが過ぎった。続けて、幾条もの軌跡が走る。注視す
ると、夜天の遠くと海を結ぶ金糸銀糸の軌跡が、かすかに明滅している。光る雨が降ってきた。
甲板では雨粒のぶつかる音がした。
僕がつい差しのべた手の上に、雨がはじけた。
小さな小さな星雨の粒で、ここまで落ちてくる間にすっかり角も取れて、小指の爪の先よりも小さく
摩耗していたらしい。手のひらには、芥子粒ほどに砕けた欠片が散らばっていた。かすかに光っては
いるが、色もあらかた抜けて、欠片の断面に虹色の光がちらりと踊る程度だ。手のひらを静かに冷や
していた。
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ 今回は手元にデータがあるので、せっかくだからアップさせて もらいましょう。 きれいなのだけれど、細かさが伝わらない質の紙でして。 ペンギンの腹がたまらんです。 月に「瀬水のペンギン査定は厳しいから苦労した」と、 何度か言われた気が……(笑) |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ お土産は二種類です。 三日月ペンギンたちが、星の湖に潜って、採集します。 ・星の雫……水晶です。命を終えて透明になった星の湖に流星が落ち、 はねあがった王冠型の飛沫が固まったものです。 ・星の欠片……スターマイカ(星形に結晶する雲母) まさしく、落ちてきた流星です。 |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ スターマイカ 星のツノがよく出ています。 |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ 水晶。 立派な柱です。 |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ 中表紙です。 打ち合わせ中に、大人なイメージ、豪華客船と、言っていたので、 アールヌーボー調にしていました。 |
◆ 灯記10hd-01: 月を追う船◆ 本文は、ちょっと飾りがファンシーですね。 左右ページで、月バージョンと星バージョンがあります。 |
瀬水いう儀個人作品 -20100815- |
◆ is: 聞き書き帖◆ 聞き書き帖は、一度やってみたかった辞典形式です。 幼いころに祖母が語り訊かせてくれた風物を、 書きつづる……という形式です。 和綴じは久々でしたが、配色センスが怪しいので、 糸の色選びからして思案しどころでした。 |
◆ is: 聞き書き帖◆ これは「白蝶貝」の説明です。 実際にある物だけれども、聞き書きされているものは、 実際には存在しないもの、という語りです。 自分が覚えているけれども、もしかしたら、 今後は忘れられていくんだろうな……という言葉をいくつか 選びました。 ・天花粉 ・水晶時計 ・白墨 ・蓄音機 ・星(つつ) ・白蝶貝 |
◆ 豆本のしおり◆ 豆本にはメッセージが書き込めますので、本好きの方に 本をプレゼントするときに、一緒にメッセージを書いて 渡してもらえたら素敵だな――と思いながら、作りました。 |