鉱石ランプ
-20100502-



◆『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』







鉱石ランプ
-20100502-




◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
アンモナイトをレコードに見立てた作品です。
缶か箱入りのアンモナイトと、豆本とのセットです。

缶バージョン。
上下二段に分かれています。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
オパール化したアンモナイト。
つるんとしていて、砂糖菓子のようなかわいらしさ。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
黒い欠片は、金雲母。
黒雲母ではなく金雲母。
きらきらしていますが、作成中は、乾燥ワカメだの昆布だの
塩なしの韓国海苔だの味付け海苔だのと、呼ばれてました(笑)





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
缶の表は、青ラベル。
物語の中に登場する建物をイメージして、月が描いてくれました。
モデルはイエメンの街並み。
フェズの都市イメージも。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
こちらは蓋の内側。
蝋燭です。
音盤らしく、うっすらと楽譜が見えるでしょうか。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
箱バージョン。
箱バージョンは仕切りありで、二室。
こちらはオパール化と、半割りアンモナイトの二種。
半割りがメイン。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
オパール化アンモナイト。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
半割りアンモナイト。
磨かれているアンモナイトは、気室が美しい。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
箱バージョンの金雲母。
赤い糸は、物語に出てくる、蜃気楼の街の産物です。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
内側は木目のように塗り加工。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
外側はアンティークっぽく白塗り。







◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
セットの豆本。単品でも販売していました。
『蜃気楼の街と呼ばれた街を訪れた旅行記。
表紙はアンモナイト。
……が、実は瀬水はオウム貝を描いていたようです。
アンモとオウム貝は気室の隔壁の部分が逆向きの弧です……

ともあれ。
表紙は刷りあげてから、『青い鳥文庫』のようだと思いました。
クレヨン王国シリーズは、心の宝です。





◆ 灯記10st-01: 『螺子式音盤 夜想曲(ネジシキレコード ノクターン)』◆
中表紙を絵本っぽくしてみました。
ちょっとアラビアっぽいですね。




少しご紹介を。

 妖魔の物だった雨の天文盤は、自ら光を放っていました。熱くない炎を手の平にのせたように雨の    かろやかな音色が聴こえてくる。  響きのよい鈴を、余韻を長く引き伸ばして振っている音だ。ひとつではなく、いくつも鳴っている。  灯の花の香が漂う夜気を震わせて、ゆるやかに高く低く音が縒り糸のように紡ぎあわされて、旋律  をなした。  音楽がどこから流れているのか、音色の邪魔をせぬように静かに周囲を見回す。酔いの招いた幻聴  でない。誰かが音の豊かな鈴を振るって演奏しているに違いない。  私の案内人が戻ってきて、耳打ちする。彼は他の卓に友人を見つけて、ご相伴に与ってきたらしい。  金色の酒の香りがした。  案内人が示した方向には、華奢な脚の小円卓があった。私が両腕で輪を作ったほどの小円卓に、天  板よりも二回りは小さい函が載せてある。注意して見れば、中庭のそこかしこに小円卓が据えてあ  る。客の使う卓とは形を違えて区別してあった。  卓を離れようとして、空になった小壜の始末に困ったが、喫茶処の者と思しき男が、盆に小壜を受  け取った。  小円卓に近づくにつれて函からの音色は大きく聞こえる。楽師もおらず、蓄音機にしては喇叭がな  い。それでもひとりでに鳴っているとなれば、自動式の音函だろうか。  小円卓上にある函は濃茶の木製で、遠いランプの灯でもわかるほど、人の手摺れで磨かれて黒光り  していた。函の蓋には渦巻きと蔦のからんだような模様が描かれていたが、それらは蓋の木材に穴  を開けて刻まれた模様で、飾り穴から音楽があふれ出していた。  誰にも咎められる気配がないので、私はそっと蓋を取り去った。  函の中には、渦巻きがひとつ納められていた。  銀の鈴を振るう音を、渦巻きが発している。  私は呆気に取られてしまい、気づくと函本体を持ちあげていた。見た目よりも、腕に応える重さだ。  函は上下二段に分かれていて、下段に機構が隠してあるようだ。私は渦を納めた函を、灯り咲く木  の間近まで運んでいった。  花灯りに照らされて、渦巻きは控えめな光沢を返した。つややかな薄緑や、琥珀や、陽射しを浴び  た砂の輝き色。  渦巻きの形状は、巻き貝に似ている。  元はきっちりと巻いていたものか、身を震わせて鳴るたびにゆっくりと巻きがゆるんでいく。  渦巻き貝の音色は、金砂を撒いたごとくの夜天の星がさざめいているようにも響く。  聞き惚れるうちに音楽はゆるやかにゆるやかにほどけていき、ついに渦巻き貝はほどけきった。