鉱石ランプ
-20091229-



◆十二月座の欠片
◆雨の天文盤







鉱石ランプ
瀬水いう儀個人作品
-20091229-




◆ is: 十二月座の欠片(かけら)◆
十二月十二日十二時(二十三時五十九分)の星図を
描き起こしたカードです。
天文好きの血が騒ぎました。





◆ is: 十二月座の欠片(かけら)◆
小壜に封入してあるのは、リチア雲母。鱗雲母。
薄紫の、きらきらした薄片です。
それと、シーグラス。海のものが、天にのぼります。






◆ is04: 雨の天文盤◆
物語です。
日照りに苦しむ村を救おうと、少年ティティは、
「雨を降らせる妖魔」を呼び出すという『雨の天文盤』を
勝手に持ち出します。
妖魔に雨を降らせてもらうためには、謎かけ勝負に勝たねば
ならず、ティティは命がけの勝負に出たのでした。

タイトルの雨の字を、中の点を雫型にしてみたり、
文、盤の文字の点を星にしてみたり、今までで一番
楽しめた表紙デザインでした。





◆ is04: 雨の天文盤◆
どの本も、ポストカードとセットなのでした。





◆ is04: 雨の天文盤◆
本文の飾りは、簡易の天文盤柄です。




少しご紹介を。

 ティティは雨の天文盤から、布を取り去りました。  妖魔の物だった雨の天文盤は、自ら光を放っていました。熱くない炎を手の平にのせたように雨の 天文盤は光り、ティティの指の隙間からこぼれた光は、地面やティティの足をまだらに照らします。  磨きたてた青金石のようにつややかな濃紺の地の円盤に、金銀に輝く点が無数に散らばっています。 大きく光るものも、小さく光るものもあり、ところによってはうんと集まって、帯のように円盤を横 切っています。  濃紺の円盤の上に、不規則な形に穴の空いた金色の円盤が重ねてありました。金色の円盤は中心の 一点で、下の濃紺の円盤と留められているので、上下別々に回転させられます。金色の円盤の縁には、 ティティには読めない文字が刻み込んでありました。  ティティは円盤の縁に、四つの、目立つ刻み目を見つけました。金色の円盤の穴からのぞける濃紺 の円盤の表面に、夜空で見慣れた形があるのにも気づきました。  四つの刻み目は方角を表しているのです。ティティは東西南北をあわせて雨の天文盤を夜空に掲げ、 上下の円盤のずれを調整しました。  夜空の星の並びと、雨の天文盤上の星が一致しますと、妖魔を呼び出す呪文を唱えました。  目の前に妖魔が現れるのを、ティティは目を瞠って待ち受けました。ところが、十数えても、何も 起こりません。  聞えなかったのかしらんと、ティティはふたたび、もっと大きな声で呪文を唱えました。やはり、 何も起きません。  ティティは胸いっぱいに空気を吸い込んで、三度、呪文を唱えようとしました。 「聞こえている」  地の底から轟く声に、ティティは飛びあがりました。ティティが振り向くと、ティティの三倍以上 も背丈のある妖魔がふんぞり返っていました。 「儂を呼んだのはおまえか。ふん、ずいぶん細っこいな」  ティティは腰が抜けそうでした。気づけば、あたりは昼よりも明るいのです。マメの畑は何処かへ 消え失せ、いつの間にか、金色に輝く宮殿の大広間にいるのでした。  壁も床も天井も黄金色です。壁から突き出た燭台も金で、鷹の頭を模してあり、両目には紅玉を嵌 め込んであります。燭台で燃える炎は透明に揺らぎ、金剛石の虹色のきらめきを乱反射させています。 妖魔の背の何倍も高い天井には、赤や青や緑に輝く宝石が、天の星図を象って埋め込まれています。  象牙の香炉が大広間の方々に置かれ、えも言われぬ香りの煙りをくゆらせています。大広間の奥に は、妖魔の座る玉座が据えられています。黄金細工でまばゆい玉座の足許に、頭部が残された、斑の 模様のある獣の毛皮が敷かれています。獣の両目は険しく光る黄玉で、剥き出した牙は雪花石膏なの でした。  何処も彼処も眩しくて、ティティはぼうっとしてしまいました。