鉱石ランプ
-20090816-



◆一夜湖(ひとようみ)
◆銀火(ぎんか)
◆鍵
◆竜の宮に架かる月





◆ 灯記09hd-01: 一夜湖(ひとようみ)◆
一夜湖。月遠封入。
揺らぐ水面と、睡蓮と、月光に戯れ泳ぐ魚。
ケースにしまうと、石が水底に眠っている様子になります。





◆ 灯記09hd-01: 一夜湖(ひとようみ)◆
魚は、赤金と、黒との二色。
碧色の鉱石はカバンシ石。カバンサイト。
ケースの外側は、シャンパンゴールドの紙。





◆ 灯記09hd-01: 一夜湖(ひとようみ)◆
一夜湖の物語。
物語になっている解説書は瀬水作成。
気のふさぐ病にかかった平安貴族の姫君に、
唐渡りの商人が、一年に一度だけ、幻の湖を出現させる
世にも稀なる品物を披露します。





◆ 灯記09hd-01: 一夜湖(ひとようみ)◆
折本の形式でした。
物語の表面にも、流紋をのせて。






◆ 灯記09hd-02: 銀火(ぎんか)◆
『鉱石ランプ―銀火型―』の火種として用いる鉱石。
月遠が鉱石を封入。
アンモナイト、蛍石、方解石





◆ 灯記09hd-02: 銀火(ぎんか)◆
『鉱石ランプ―銀火型―』の火種として用いる鉱石。
月遠が鉱石を封入。
蛍石、アクアマリン、クンツァイト





◆ 灯記09hd-02: 銀火(ぎんか)◆
銀火の解説書、表面。
解説書は瀬水作成。
銀火となるのは、内に火種を閉じ込めた鉱石。
これを、銀晶液という特殊な溶液に浸して、
鉱石ランプ用の火種となるように加工します。





◆ 灯記09hd-02: 銀火(ぎんか)◆
銀火の解説書、裏面と中身。
鉱石の種類によって、燃え方が変わります。
オパァルなら乳白色の海に虹のきらめくように。
蛍石なら、蛍の群れ飛ぶように。







鉱石ランプ
瀬水いう儀個人作品
-20090816-




◆ is: 鍵◆
鍵のカードです。
鍵は貘の好物であるというのは、『蒼水宮の夢渡り』、
『時計塔と白夜の鍵師』中の設定です。





◆ is: 鍵◆
鍵のカードです。
ラフィンやシーリングスタンプの色を変えて、
何パターンか作りました。






◆ is04: 竜の宮に架かる月◆
物語です。
タイトルの「月」は「海月(くらげ)」とかけたのでした。

竜の宮の主のひとり娘である、幼い一の姫。
竜の宮に盗みに入ったくらげ。
牢屋に閉じ込められたくらげと、宮から出ていきたい姫とが
互いの素性を知らないままに心を通わせます。
くらげは脱獄したく、どうにかして娘も連れ出したいと願いますが、
ふたりの出会いは宮の主を怒らせたのでした。





◆ is04: 竜の宮に架かる月◆
蛍烏賊の手燭が気に入って、本文飾りも手燭です。
珊瑚の持ち手は、さぞかしすべらかでしょう。




少しご紹介を。

 昔々のその昔、夕間暮れはあの世との架け橋になるほど濃く、わたつ海(うみ)は今より数百尋(ひろ) も深く、息をするものしないものの区分が曖昧でありました。  竜の宮の主もお若くいらっして、一帯に覇を唱えんと猛っておりました。宮の主に恭順するものが 続々と増しておりましたが、主は苛烈ななさりようで嫌われてもおりました。竜の宮の一帯が気を張 りつめていて、誰ぞはしゃいで騒ごうものなら、宮の衛 士や、宮に降(くだ)った一族が、目を真っ赤に瞋(いか)らせて飛んでくるのです。  竜の宮が築かれたあたりは、宮の主が頭角を現すまでは、ものども小競り合いと馴れあいで喰った り喰われたり。睨みあわずにすれ違えない間柄ではあっても、地口も言いあい、誰が一等とえばるこ ともなく、折り合いをつけて過ごしていたのです。  宮の主にまつろわぬものの一であるくらげは、その頃おいには骨があり、海藻の森も素早く泳ぎ抜 けるのを得手としていました。銀鱗の魚らと競ったりしていましたが、近ごろは誰も彼もぎすぎすし て誘いにくくなり、まったくおもしろくないのでした。  鬱々と楽しまなかったくらげは、水のぬるい、ある春の夜に、竜の宮に背を向けるものらと宮へ忍 び入りました。  竜の宮の蔵から財宝を盗もうというのです。宮の蔵は不寝番が立っているのではなく、夜回りがい るだけでしたので、忍び込めればしめたものでした。  くらげは、ひとつふたつ金目の物を持ち去って宮の主の鼻を明かせれば、盗んだ宝は宮の門前に放 り捨ててやる心づもりでした。  けれども、くらげが語らった盗っ人仲間は、宮のお宝に目が眩んでしまいました。  彼らは南洋の真珠や珊瑚の枝、沈んだ船から引きあげた翡翠の玉や璧、勾玉なんど を、海藻で編んだ行李(こうり)に詰め過ぎ、担ぎあげられずにふうふう息を切らしました。 「おまえら、よせよ。俺たちが狙ってるのは、」  くらげは引き留めるのに、間に合いませんでした。  しばらく戻って来ない筈の夜回りが、蔵の外で音の波をうわんうわん発する呼子を鳴らしたのです。  半ちくな盗っ人一味の顔色をなからしめたのは、棍(こん)をかまえて駆けつけた衛士でし た。強力(ごうりき)の衛士らに蔵を囲まれては逃げおおせるものではありません。  盗っ人どもはさして抗えもせずに捕らわれ、泳ぎの達者なくらげも蔵の隅に追い込まれて、縄をか けられてしまいました。 「竜のお宮に押し入るとは、不届きものめ」  衛士らに小突き回され、盗っ人一味は、めいめいが離れた牢に振り分けられました。  牢に引かれゆく道で、くらげは、盗みの手筈がしくじったわけを悟りました。ともに忍び込んだ仲 間のひとりが縄目も打たれず、衛士らの陰に身を潜めていたのです。  ひそかに宮の主に取り入りたがっていた仲間の手で、くらげらは、貢ぎ物がわりに売られたのでし た。  いかな情けをかけられたのか、くらげは首を刎ねられず牢につながれたままでした。  かろうじて生かされておりましても、捕まった仲間のその後は杳として知れません。日に一度の食 事を運んでくるのはやぶ睨みの平目で、くらげが何を話しかけても、目もくれませんでした。  初めは牢を抜けようと手立てを練っていたくらげでしたが、岩壁の牢は頑丈で抜け穴も掘れず、徐 々に身体は衰えて、牢を抜けられても宮の外へ泳ぎ逃げ切れるか疑わしくなってゆきました。  くらげは昏(くら)い心を腹の内に蓄え、牢の格子を握りしめて無為に日々を費やしておりました。